ふりだしにもどる。このんで。
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有川浩さんの新作、ストーリー・セラーが8月20日発売になります。
この装丁の、慎ましくも美しいこと…!
それだけでも楽しみで仕方ないのですが、このお話は既に名作だとわかっていますので、更に楽しみで仕方がないのです。
このアンソロジーそのものの豪華さと素晴らしさ、そして構成の美しさ(全部ひっくるめて美しさとしか言えない自分がもどかしいのですが)もさることながら、この「ストーリー・セラー」を初めて読んだときの衝撃と感動は、本当に、とにかくこのアンソロジー企画に感謝したいほどでした。上手く言えなくてこんな物言いになってしまうのが悔しいのですが、有川さんのファンとして、本当に嬉しかったのです。このアンソロジーで、この物語が生まれたことが。
このお話は、ラスト、旦那様に編集者から問いかけられる言葉でこの物語の仕掛けが見えるのですが、そうするとまた、わたしたち読者が有川浩に同じ問いを抱くように出来ている、と、わたしはそう読みました。
有川さんがこれを全く狙わずにやったとは思えず、主人公の作家をはじめとした登場人物の名前を伏せていること、その作家が女性であること、その女性が使う論理や信念が有川さんを彷彿とさせること、そして悲劇が襲った後、彼女が選ぶ方法、最後の言葉……そして、旦那様に返される問い。有川さんを知っている読者は、「有川浩がこの物語を書いた」ことまでも包含された物語である、と、感じるのではないでしょうか。
単行本化される「ストーリー・セラー」には書き下ろしの作品も所収しているそうで、それも楽しみの一つなのですが、わたしはその前に、この「ストーリー・セラー」に始まった、有川浩さんの「Story Seller」掲載三部作についての、ぼんやりとした仮説というか、考えていたことを思うままに綴ってみたいと思います。
「Story Seller2」です。こちらに有川浩さんは、「ヒトモドキ」という作品を寄せています。
ものすごく、ものすごく気持ち悪いお話で、有川さんも「前回のテイストを期待されると大きく外しますので」と仰っていた、なんというか、悪意の塊、有川さんがよくちらつかせる、ぬめりとした毒が全面に出ている珍しいお話だったかもしれません。この話の一番もきもきするのが、えっ、ていう感じの、その毒がぷっつり切られる瞬間の、何とも言えない、肩透かし感だと思い、そういう、すっきりしない切り方をするのが、珍しいお話、だなあと。
ただ、これ、前回のテイストと全然違う、というお話だと言われたのですが、でもこれ、……わたしの初読時の感想いいですか、「ストーリー・セラー」の、悪意パートと同じぬめりだと思った。
ラスト、主人公の独白と告白でこのお話の仕掛けがわかるのは、「ストーリー・セラー」とよく似ていると思います。それで、あれ? と思ったのでした。でも、何と言うか、今回は明言してないしな、と、保留。
そして、「Story Seller3」の有川浩さんの作品が、「作家的一週間」。脱力担当、と本人が仰っていましたが、扱っているのは言葉のお話で、この視点が非常に有川さんらしく、そしてどきりとさせられます。
ここで、有川さんご自身の口から、「Story Seller」シリーズは主人公が作家、という縛りを作って書いたという解説が出るのですが、わたしがこの一連のシリーズに思っていたこと、それは、
『「Story Seller」シリーズは全て「ストーリー・セラー」の主人公が描いたお話ではないのか』
ということでした。
どの作品も、主人公は女性の作家で、また、名前を持ちません。
わたしがそれを思ったのは、「ヒトモドキ」を読んだ後でした。先にも書いたように、あれ、と思ったのです。あの、「ストーリー・セラー」の主人公があてられた悪意に、ひどく近い毒を含ませたお話。
「ストーリー・セラー」が、有川浩がその物語を書いていることまでも包含した物語だと感じたとき、その主人公であった作家が、同じようにその作家がその物語を書いていることを包含した物語として、「ヒトモドキ」を書いたとしたら。書いていたとしたら。そして、「作家的一週間」を、同じように書いたとしたら。書いていたとしたら。
「作家的一週間」でも、作家を支える旦那様が描かれます。そこに描かれたささやかな平和な日常が、……「ストーリー・セラー」のあの姿に繋がるとしたら。
わたしがそれを思ったのは、「ヒトモドキ」を読んだ後でした。先にも書いたように、あれ、と思ったのです。あの、「ストーリー・セラー」の主人公があてられた悪意に、ひどく近い毒を含ませたお話。
「ストーリー・セラー」が、有川浩がその物語を書いていることまでも包含した物語だと感じたとき、その主人公であった作家が、同じようにその作家がその物語を書いていることを包含した物語として、「ヒトモドキ」を書いたとしたら。書いていたとしたら。そして、「作家的一週間」を、同じように書いたとしたら。書いていたとしたら。
「作家的一週間」でも、作家を支える旦那様が描かれます。そこに描かれたささやかな平和な日常が、……「ストーリー・セラー」のあの姿に繋がるとしたら。
……というのはわたしの勝手な思いつきなのですが。そもそも、勿論、実際には有川浩さんがいずれも書いているわけなので、共通性を感じ取るのは当たり前なわけで。
ただ、「ストーリー・セラー」はとにかく、素晴らしくて素敵な、名作だと思っています。
ただ、「ストーリー・セラー」はとにかく、素晴らしくて素敵な、名作だと思っています。
ストーリー・セラー、「Seller」でありながら、それは「Gift」のように、美しく包まれた装丁の本です。
まるで、たった一人の大切な人への、わがままな贈り物のように。
まるで、たった一人の大切な人への、わがままな贈り物のように。
わたしもとても楽しみです。
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